先日、小次健ファンの方々から姫川にこんな質問があったそうです↓
『K3Yの日向さんは携帯電話を持っているのか、もし持っていないのなら金持ちそうなコンラッドが買ってあげてほしい』

……ジャンルを超えてまでウチの貧乏小次郎に携帯を持たせてあげたいという皆さまの心根の優しさに、姫川と私は激しく心を揺さぶられました。
できるならその気持ちにお応えしたい!しかし!!ウチの月収3,980円小次郎が携帯のような高額商品を手に入れられるはずがない!よしんば手に入れられたとしても、毎月の利用料金が払えるはずがあろうか!?いや、ない!!
そんなジレンマを何とか解決してみました!
「もうやめて、日向のHPはゼロよ!!」という皆さまの悲鳴が聞こえてくるような気がしますが、きっと気のせいのはずなので、途中にコンユ要素をちょっぴり入れながら続きます。
………………………………ゴメン。


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     携帯物語

日向小次郎は貧乏だった。
貧乏故に、今時クラスの9割が持っている携帯電話というものにも、彼は無縁の日々を送っていた。
恋人の若島津が、自分以外の人間と携帯電話の番号や、『アドレス』とかいう住んでいる場所ではない住所?を交換しているのを、いつも興味なさそうに、だが内心お笑いのザブン○ルのように悔しがりつつ眺めていた。今の携帯電話には、何のために付いているのか知らないが、小さいくせに赤外線ビームを発射することも可能らしいし、TVを見ることも出来るようだ。
だが、そんな高い機能を備えているということは、当然値段もお高い。彼の1ヶ月分のバイト代では到底手に届く金額ではなかった。
給料のほとんどが家計と若島津へのプレゼントに消えてしまう彼にとって、自分の自由になる金額は3,980円/月しかないのだ。
そんなわけで、日向にとって携帯電話とはドラえもんの便利道具、憧れの象徴となっていった。


いつか……いつか俺が成功した暁には、最新型の携帯を買って、みんなの注目の的になってみせる……!!
そして、そいつらの目の前で若島津とアドレスとやらをたくさん交換してやるぜ………今に見てやがれ!!


そんな決意も空しく、相変わらずの日々を送るだけだった日向に、転機は突然訪れた。







「みんな、見てくれーーー!!俺もついに携帯を手に入れたぜ!!!」

突然の日向の叫び声に、東邦サッカー部部室は蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。
部員の誰もがそんな日が来るとは予想だにしていなかったのだ。

「マジっすか日向さん!?」
「いつ買ったんですか!」
「どこで買ったんですか!?」
「ってか何で買えたんですか!?(by.タケシ)」
「いくらだったんですか!?」
「早く見せて下さいよ!!」


思惑通り部員たちの注目の的となったところで、日向は尻ポケットから得意気に黒い携帯を取り出した。
パッと見たところ、最近の機種の数倍は厚みがあるようだ。
(だいぶ前の機種みたいだな。まあその方が安いだろうし……)

若島津を含める部員たちがこっそり納得していたその時。

(何だコレーーーー!?)

彼らの動きが止まった。







………それは、とても不思議な携帯だった。



数字のボタンもない、アンテナもない、カメラもない。
だが、細長い液晶画面はある。文字専用の。


(っていうかこれ………)



(【携帯電話】じゅなくて【ポケベル】じゃねーか!!!)

今、日向以外の東邦サッカー部部員の心が一つとなった!!
言葉もなく打ち震える部員たちに、日向は語る。

「俺もやっと【携帯】を手に入れることが出来たぜ!記念すべき第一着信は……もちろんお前だ、若島津ーーーーー!!!」
(ギャーーーーー!!!)

その時、誰もが若島津の心の悲鳴を聞き取った。
そんな恋人の動揺にも、視線を合わせない仲間たちの様子にも、浮かれ日向は一向に気付かない。


「さ、若島津。まっさらの俺の可愛いコイツにお前からの着信第一弾を刻んでやってくれ!」

……周囲が固唾を飲んで見守る中、若島津は決意を秘めた瞳で日向を見返した。
「そうですよね、これだって…これだって立派な【携帯(するもの)】ですよね……!」

「当たり前じゃねーか、何言ってんだ若島津?
ま、さすがに最新機種とはいかなかったが、それでも【携帯】には違いないぜ!」

「………わかりました。俺、呼び出します!日向さんのこと、呼んで呼んで呼び出しまくりますから……!!あんたの番号を俺に教えて下さい…っ!!」

「お、おう!そんな熱烈に言われると照れるじゃねーか!でもま、お前からの着信ありまくりか……フフッ、悪くねーな!俺の番号はこれだ!」



二人は熱く番号を交わしあった……。
そうして、若島津の形の良い指が静かにゆっくりと、新たに登録したばかりの番号を呼び出していく。

一瞬遅れて、日向の携帯ポケベルから「ピーピーピー」と着信音が聞こえてきた。
着メロでも固定メロディーでもないその単調な響きに、その場の全員が涙を誘われる。

それでも、夢が叶った当の日向は本当に嬉しそうだった。

「おおっとォ、俺の携帯に若島津から着信ありだァァァ!!若島津、俺、公衆電話探してくるからちょっと待っててくれな!」

そう言って駆けていく日向の背中に、若島津は誰にも聞こえないよう小さく呟いた。

「はい……日向さん…!俺、いつまででも…ずっとずっと待ってますから……!!」

日向は知らなかったのだ。
携帯電話の普及と共に、必要とされなくなった公衆電話が次々に撤去されていることを。





その日、若島津の携帯に日向からの着信はなかったーーーーー。

2009.6.5UP


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君は読み続けることができるか?次回へ続く!
あれ?良く考えたらこれハッピーエンドじゃね?