切り取られた空間              ゆのまゆさま



次は音楽の授業。クラスメイトはもう既に音楽室へと移動していた。

あともう僅かで始業のチャイムが鳴り響くはずだ。

授業に遅れることはわかっていたけれど、もう少しこのままの時間
を過ごしたい。

まだ高い太陽が放つ金の光で溢れる教室の中で、長い睫毛を伏せて
若島津は眠っていた。

その寝顔を日向は静かに見つめている。

校庭で騒いでいる声も、廊下で交わされている笑い声も、なんだか
遠くに聞こえて、この教室が切り取られたような錯覚に陥る。

この外界から切り取られた空間ならば、何をしても許されるだろうか。

日向はそっと手を伸ばしてみた。

頬に触れる。

想像通りの滑らかな感触に、もっとふれたい衝動に襲われる。

唇に触れる。

しっとりと潤んだ感触に、指先でふれただけなのに、身体が震える。

唇で触れようとした、その時。

若島津の睫毛が大きく揺れてゆっくりと黒い瞳があらわれた。

「日向さん・・・?」

かまわずにその口をふさぐ。
軽く触れ合った舌先は、甘かった
。

2・3度絡ませただけで、不意に離れる。

「日向さん・・・」

若島津は切なそうな表情を浮かべるその瞳を
隠すように俯いてしまう。

この恋に苦しんでいる彼を
これ以上
苦しめるつもりはないけ
れど。

自分も苦しいのだ。祝福のないこの恋に。

お互いに「好きだ」と言えないまま、時を重ねている。

いつか来る別れの日に「ゲームだった」
と自分にいいきかせるために。

「もう次の授業始まってるぞ。」

何もなかったかのように背を向けて教科書を抱えて歩き出す。

慌てて机の中から教科書を探している音が背中越しに聞こえる。

この切り取られた空間を手放すのが惜しい。

もう1度振り返る。

口付ける。

 

触れ合った舌先は、変わらず甘かった。

この時が止まればいいのに。

 

いつまでもこの口付けが甘ければいいのに。

ゆのまゆサマへのご感想はこちらからどうぞv

あんまり素敵なのでコメントは控えさせて頂きます。
はぁ〜浸ッちゃうよ・・・
vvvvv

back