One Night of Wine and Roses |
国際大会で見事優勝を果し、興奮冷めやらぬ凱旋帰国前日の夜9時過ぎのこと。 お偉いさん方との堅苦しい祝勝会を終えた全日本代表メンバー達は、内々で宿泊ホテル内の パーティールームを借り切り、祝杯を挙げていた。 「みんな、今大会中はキャプテンであるオレを盛り立ててくれてほんとーにありがとう!かんぱーい!!」 全日本チームキャプテン、大空翼が良く響く高めの声で能天気に乾杯の音頭をとる。 美味い酒が飲めるのを今か今かと待ちわびていた翼以外のメンバー達は、翼の言葉を聞いた瞬間こんな言葉が頭を過った。 …本当におめでたいヤツ…。 おかげで音頭に続く乾杯の言葉は皆口ごもってしまう。 ま、翼がオメデタイのは今に始まったことじゃないしね。 そんな事よりも酒だ酒! 空いたグラスにワインを注ぎ合った彼らは、一斉にグビグビと飲み始めた。 「いや〜俺達も堂々と酒を飲める年になったなぁ〜」 「だよねだよね〜」 「しかも合宿中からずーっと禁酒させられてたから、今日の一杯はマジ美味いっ」 「だよねだよね〜」 「…オマエさっきっから”だよねだよね”しか言わねーのな」 「だよねだよね〜」 「もしかしてもう酔っぱらってる?」 「かもねかもね〜」 盛り上がってるのか盛り下がってるのか。 パーティールームはだだっ広く、しかもテーブルが離れた位置にぽつぽつとセッティングされていた もんだから、必然的に何組かのグループに分かれて酒を酌み交すことになった。 そのグループのひとつ、ディフェンス&キーパー組。 ポジション的にやはり最後尾が落ち着くのだうか、入り口から一番遠い奥のテーブルを陣取っていた。 「若島津、酒の減りがすくねーな、もっと飲めよ」 乾杯で注がれたワインがそのまま残る若島津のグラスを見た松山がワインボトルを手に酒を勧める。 「俺は飲めないからいい」 「嘘やろ?見るからにザルって感じやのに?」 松山の隣りに座る早田が意外だと言わんばかりのオーバーアクションで彼に続く。 「ほんとにほんと。だからジュースだけでいい」 若島津は苦笑いし乍ら手に持ったオレンジジュース入りのグラスを持ち上げてみせた。 「あのなー、酒ってのは飲んでりゃそのうち飲める様になるんだって」 「そうやで、飲め飲め」 そう言われてもなぁ…。 畳掛ける様に酒を勧める二人に若島津はこっそり溜息を吐く。 が、彼のその様子をシッカリ見ていた人物が約一名。 「せっかくこのピンク色のシャンパンを持って来てやったってぇのに飲まないわけではあるまい?」 若島津の隣りに座っていた若林がニヤリと笑い、足下のバッグからおもむろに高級そうなボトルを取り出す。 「うおおおお!ドンペリニョーンッ!!」 「しかも2本もッ!!!」 「どっから持ってきたんだよ?!」 「他でもない若島津に飲ませてやろうと思ったのになー。飲まないんなら持って帰ろう」 若林が態とらしくボトルをバッグに戻す仕草をすると、松山がボトルに必死にしがみつく。 「ダメー!!!若林!!それ俺が飲む!ていうか、若島津も飲むよな!?」 「いや…」 断りを入れようとした若島津の頭を身を乗り出した松山が無理矢理押さえ付けて頷かせた。 …人間凶器相手に、なんて剛胆なんだ、松山ってヤツは。 「おーし。じゃあ他の奴らには内緒なv」 「「「イェッフー!!!」」」 タイミング良くカラのグラスを持ってきた森崎が各人にそれを手渡す。 若林がゆっくりとした動作でコルクを抜くのを周りに居た人間達はささっと囲み、脱いだジャージで 音が聞こえない様にボトル上部を押え込んだ。 なんて素晴らしい連帯プレイ。さすが世界トップレベルのディフェンス力だ。 慣れた手つきでドンペリを開けた若林が個々のグラスへ酌をする。 ピンク色のシュワシュワした液体が手元のグラスへ注がれるのを松山、早田、次藤、および森崎は喉を ゴクリと鳴らし乍ら見つめていた。 若島津も黙って自分の持ったグラスに注がれたピンク色の液体を凝視する。 …美味そうだなぁ。でも、俺、酒止められてるしなぁ…。 口をつけるのは止めよう、そう思っていたが、真っ先に飲み干した松山が「うんめー!」と叫んだ瞬間、 興味深げに鼻を近づけてみる。 とたんに広がる豊潤な香り。誘惑に負け堪らず一口飲んでみる。 …う、美味いかもしれない…。 若島津はその香り高い液体を体内に流し込んでいった。 それから30分程経過。 話題は今大会の話から個々のプロチームの話、そこからお国自慢が始まり、そして何故か、 好みのタイプは?という話題に擦り変わっていった。 「お、俺は、見た目とか関係なくて、俺を好きになってくれるんだったらどんな子でもイイかな、 なんて…」 「また弱気なこと言ってるなァ、森崎〜。そんなんだから彼女出来ないんだぜぇ」 エラそうに語り始めた彼女持ちの松山に、森崎は人の良い笑顔でボリボリと頭を掻いた。 「そういや松山の彼女は可愛くていかにも清楚って感じやったなぁ。美子ちゃんだっけ?」 早田がからかう様に松山の腕を肘でつつく。 「おい!テメェ人の女狙ってんじゃねーぞ」 「誰も狙ってないわ。なー次藤?」 「ワ、ワシは別に何とも…」 言い乍ら顔を赤らめる次藤。オマエまさか藤沢さんを狙ってたのか!? 「ムキー!美子は誰にも渡さん!」 「次藤、松山を敵に回すとエライしつこいでぇ。別の子見つけときぃや」 同情する様な目線を次藤に態とらしく送り、彼の肩をトントンと叩く早田。 彼に遊ばれてるとも気付かず焦った次藤はどもりつつも反撃に出る。 「そっ、そういう早田はどうなんタイ!?」 「ワイは〜、やっぱり、オッパイが大きい子がええなぁ〜」 「わ〜っ!出た!オッパイ星人発見〜」 早田のヘンタイ発言に大袈裟に反応する北の荒鷲、松山。 「男はそうやろ?大概!?」 「俺の美子は控えめな美乳ですぅ〜」 「あ〜も〜始まったぞ美子自慢が」 松山の止まらぬ彼女自慢話で散々な目に遭った経験のある若林が口を挟む。 「そう言う若林はどうなんだよ〜?」 「俺?…そうだな、やっぱり美人が良いな」 「あー若林は顔で選ぶんや?この人でなし」 「本気と書いてマジっぽいところが早田よりサイテー」 「バッカ、どうせ一緒にいるなら綺麗な子の方が良いに決まってるだろ?とりあえず美人で、 サラサラのロングヘアで、背がすらっと高くて、無駄口たたかない静かな子が良いな」 「そんな出来た子そうそういねーよ!」 「いや…その理に適ってる人間がこの場に一人おるで」 早田の一言で、皆気付いた様に若島津へと顔を向ける。 万人が認める秀麗な美貌を誇る若島津はずっと黙りこくって手酌でドンペリを呷っていた。 ボトルを見ると既に空。 「あああーっ!!!もしかしてボクたちの命の水がもう無くなってる!?」 「なんだよコイツ相当飲むやんけ!?」 「おい…大丈夫か?」 若林が若島津の肩を揺すった。そのまま崩れる様に若林の腕に吸い込まれる若島津。 「…コイツ、完全に酔っぱらってない?」 「ホンマ大丈夫か?」 すると若島津は突然顔をバッと上げ、若林の顔を見つめた。 「オイ…オマエ、俺の事が好きだって?」 若林はゴクリと唾を飲んだ。 なんてゆーか、そうゆう気は全然無かったんだけども、今自分の腕の中にいる人物の高揚した頬、 赤く染まった唇、そして少し潤んだ綺麗な流し目を見ると思わず「ハイ、ボクハアナタノコトガスキデス」 と言ってしまいまそうになる。 「どうなんだよ?…」 若島津はその美しい顔を若林の顔にぐぐっと近づけた。 あ、このままだとマジでキスする5秒前。思わず目を瞑ってしまう若林。 周囲は口をあんぐり開けたまま二人の行動を凝視していた。 「…って、ナニ目ぇ瞑ってんだボケェ!!!!」 「いでぇぇぇぇ!!!!」 若島津は若林に思いっきり頭突きを食らわせた。ボコッと嫌な音がした様なしてない様な。 「俺はオマエの事が死ぬ程ダイッ嫌いなんじゃー!!このヘンタイクマ野郎!!!!」 頭突きした勢いで立ち上がった若島津は踞る若林にさらに鉄拳を食らわせようと拳を掲げた。 それを慌てて止める松山と次藤。 「暴れるなって若島津!」 「とっととドイツの森へ帰りやがれ!そしてハチミツ片手にビールでも飲んだくれてろ!! このゲルマンデブ!!!」 「もう止めんかい若島津!!」 目の前に座っていた早田が呆然とした侭の若林を庇いながらも突然暴徒化した若島津に怒鳴りつける。 「んだと早田〜っ?テメェそういうエラそうなクチ叩く前に、ミスって自殺点入れたりするんじゃねー!! そもそもその中途半端な関西弁がうざいんじゃー!!」 「なんやとーっ!!」 若島津の暴言に今度は早田が怒り始める。それを慌てて宥める森崎。 次藤は更に暴れようとする若島津を後ろからグッと羽交い締めした。 「離しやがれ、次藤!テメェもな、その塗り壁みてぇなデカイ図体が邪魔なんだよ! テメェのせいで敵が撃ってくるシュートが見えないばかりか、俺様の勇姿がお茶の間の皆様にご覧 頂けないじゃないか!」 「なにィ?!」 次藤の額に怒りマークが浮かぶ。まるでエイリアンvsプレデターみたいな、とってもヤバい雰囲気。 それを見て震え上がった森崎を、酒パワーで悪魔と化した若島津は見過ごさなかった。 「それにそこで小動物みたいにビクついてる森崎!」 ビシィッ!と森崎に指を指す地獄の使者、若島津。 「ヒィッ!」 「オマエもっと根性出して行きないよコラァ!!」 「ハ…ハイ…!」 「それになぁ、”こんな時に若林さんが居てくれたら…”なんてコッソリ思ってんじゃねーよコラァ! 俺の事をもっと信用しなさいよコラァ!!」 塗り壁こと次藤の腕が一瞬緩んだ隙に、凶暴な悪魔は怒りに任せて正拳でテーブルを叩き割った。 「ヒィィィィ!!!!!!」 パッカリ割れた無惨な姿のテーブルを見て森崎は完全に怯えた。 もう小動物どころかミジンコレベルまで縮こまってるし。 傍若無人に暴れ狂う若島津を見て、たまらず松山が大きな声で彼を制する。 「もういい加減にしろッ!!若島津ッ!!!」 「んだと松山?オマエこそ、いい加減取れよ、白いハチマキ!」 「オマエにカンケーねーだろっ!」 「ハチマキしてないと誰だか見分けがつかねーから仕方ないのかもしれないけどよぉ、 それ以前によしこよしこよしこよしこウルセーんだよ!!!!そんなに美子が好きなら 全日本参加してないで北海道で牛と美子の乳絞ってろ!この道産子野郎!!」 「ムキーッ!!!!」 ディフェンス及びキーパー達の大騒ぎに気付いたのか、少し離れた場所で飲んでいたその他 ポジションのメンツがどやどやと集まってきた。 その中の一人、反町が若島津の片手に握られたドンペリの空ビンを見て叫ぶ。 「あーっ!!!誰!?若島津に酒飲ませたの!??」 「反町ー!この暴れん坊をなんとかしろ!!」 「どうにかしろって…若島津に飲ませるとこーゆーことになるの、言ってなかった?」 「「「聞いてねーよッ!!!」」」 怒れる空手キーパーを必死に押さえ込むディフェンス達の叫び声がサラウンドで響き渡る。 「んもー仕方ないなー」 と、反町は溜息を吐きながら反対方向へと走って行った。 「日向さーん!ちょっと来てー」 一番遠いテーブルで飲んでいた日向は反町に呼ばれ、面倒くさそうに騒がしい人集りの中心へ 渋々やって来る。 そして若島津の様子を一目見ると、無言で周りを睨みつけ、暴れる若島津にゆっくり近寄った。 「おい若島津…いい加減にしないとお仕置きするぞ」 「ひゅー…が、さん…?」 東京の街を傍若無人に破壊する宇宙怪獣の如く大いに暴れまくっていた若島津は日向の姿を認めた瞬間 途端に大人しくなり、持ち上げかけたイスをゆっくりと床に置いた。 「こんなに酒飲んで…眼が潤んでやがるぜ」 日向は、声だけで妊娠しちゃいそうなセクシーなバリトンを発し乍ら、若島津の目元を優しく撫で付けた。 すると若島津は今までのそら恐ろしい般若の形相は何処へやら、そりゃあもう甘ったる〜い顔を日向に向け、 「ゴ、ゴメン…」とか細い声で答える。 そのまま奪う様に若島津の肩を抱き寄せる日向。 「さあ、部屋に戻るぞ」 日向に耳元で囁かれた若島津は、万人が見ても判るほど赤くなり蕩けた表情で日向の肩に凭れた。 満足そうにニヤリと頬笑んだ日向は、そのまま若島津と共に会場を後にしようとする。 が、途中で思い出した様にくるりと踵を返した。 「あ、そうだ。若島津と同室って森崎…だっけ?」 ミジンコになっていた森崎がもの凄いスピードで日向の前へ出る。 「ハ、ハイッ」 「今晩俺が泊まるからよ、オマエは俺の部屋つかえや」 ジャイアンな猛虎は相手に有無を言わせることなく森崎と部屋のキーを交換した。 そして足早にその場を立ち去る二人の影。 その場に居たメンバー達は、その光景を凍り付いたままで見届けていた。 その後、一斉に疑問の目を反町に向けたが、反町は、 「えっと…皆さんのご想像にお任せします…」 と言ったっきり、口を割らなかったとさ。 ちゃんちゃん。 終 |
全日本キャラが活き活きしていて(笑)特に松山君の美子爆弾発言(?)は大好きですvv どんなに暴れても日向さんの前では可愛い男になる若島津がラブリーvそして何より、どこまでも俺様な日向さんが最高ですvv ティッシュ様らしい、突き抜けた作品をありがとうございました♪お帰りをお待ちしております☆ |