守れ!!奇跡の聖杯(グラス)
/後編










 その頃取り残されていたSGGK男爵は、誰1人として帰ってこないまま、暇を持て余していた。
「なぁー、もう帰ろうぜ。待ってんの飽きたしよー」
クリクリ頭の石ザルが、欠伸をしながら言う。他の部下達も同様に暇そうな顔で男爵を見ていた。
「うるさい! もう少し待て! このままじゃ俺様の沽券にかかわるだろうが!」
(それにピンクの姿をほとんど見ていないに、このまま帰れるか)
男爵のボソリと呟いた言葉が聞こえたのか、石ザルが不振そうに男爵を見上げた。
「おまえよー、最近なんだか腐思考じゃねぇか?」
「なっ! 何を言っている! んな訳ないだろう!」
「あっ、誰か戻ってきた」
SGGK男爵が否定しようと慌てて声を張り上げたところで、ガラスを踏みながら誰かが帰ってきた。
「あーっ、えへん」
SGGK男爵は咳払いをして体制を整えると、ビシッと入り口に現れた人物に向かって、指を差した。
「逃げなかったことは誉めてやろう! だが萌えアイテムである『聞耳グラス』を破壊した今、俺達の使命は達せられた! 残念だったな!」
「……破壊……?」
男爵の言葉に、ユラリと顔を上げたのはブルーだった。
「おまえがやった……のか?」
「そうだ! これで腐女子共は萌えを補給できず、健全思考へと生まれ変わるだろう!」
SGGK男爵が意気揚々と演説ぶっていると、後ろにいた石ザルが、その背中を突ついた。
「おい、なんか変だぞ」
「うるさい! 今いいところ…えっ?」
男爵は目の前にいるブルーが何かおかしい事に気が付いた。
ユラユラとまるで蒸気のように、ブルーの体から気が立ち昇る。いつの間にか耳障りな警告音が鳴っていた。
「なっ、なんだ?」
男爵が慌てる中、ブルーの体を帯状に練られた気が包み込んだ。
「ブルー!」
やっと追い付いたブラックは、驚愕の声を上げた。
「大丈夫だ。奴は怒髪天を突く怒りで、萌えメーターが許容範囲を越えたんだ」
ホワイトはブラックを安心させるように、ポンとその肩に手を置いた。後ろでピンクが青筋を立ててそれを見ているが、ホワイトはピンクの視線に気が付いていない。
カッと閃光が光った。一瞬その場にいた全員の目がくらみ、視力が奪われる。
「うわっ!」
やっと視力が回復したとき、ブルーは既にいなかった。代わりにキラキラと煌めくラメもまぶしい、1人の男の姿がそこにあった。
「誰だおまえは!」
男爵が身構えると、男はチッチッチッと舌を打ち、人指し指を顔の前で振った。
「ズバッと参上、ズバッと解決! ビキニパーポー見参!」
「…この間とセリフが違わないか?」
ビシッとポーズを決めたパーポーのセリフを耳にして、先日と違う事に気が付いたピンクが怪訝そうに呟くと、隣のホワイトがこそっと耳打ちをした。
「いや、気にすんな。80年代オタクへのサービスだ(注:70年代です)」
「ふーん。サービスねぇ」
さり気なく腰に回された手にギリギリと爪を立てながら、ピンクは胡散臭そうに言った。
「いってーっ! 痛えなっ! 何しやがんだ、おまえはっ!」
「あんたの胸に聞いてみれば?」
先程ホワイトが、ブラックの肩に手を置いたのが、気に入らなかったのだが、そんな事はみじんにも出さずに、ピンクは言い放った。
「ちょっと! 2人とも痴和喧嘩をしてる場合じゃないだろ!」
そのまま、犬も食わない喧嘩に発展しそうになったところで、ブラックは慌てて止めに入った。
「あっ、そうだった。親友はどうなった?」
ハタリと今の現状を思い出し、ホワイトは視線を元に戻した。前方ではビキニパーポーがレベルアップして、ちょっとまともになったコンパッチソードをかまえたところだった。
「いでよ、コンパッチソード! 萌えの光を受けて、今必殺のネギーアタック!」
鋭い気合いと共に、Nのマークの閃光が走る。
「ぐはぁっ!」
Nマークに切りつけられた手下の顔が萌えに緩む。パーポーは倒した相手に近付くと、その胸ぐらをガシッと掴んで、乱暴に揺さぶった。




「言えっ! 奥のブースの聞耳グラスを割ったのはおまえかっ!」
「ちっ、違う、俺が割ったのは第1ブースだ…」
「貴様じゃないのか…!」
パーポーは掴んでいた胸ぐらを、投げ捨てるように放すと、再びコンパッチソードをかまえた。
「次はどいつだ…?」
ギラリと殺気立った瞳を向けられて、男爵達は慌てた。
「ドッ、ドイツと言えばこいつです!」
自分の保身を一番に考えた石ザルが、男爵の体を一番前に押し出した。
「バッ、バカッ! 何をする! 俺達が割ったのは、第2ブースまでだろうがっ!」
「んな事言ったってよぅ! あいつの怒りを治めるにはよぅ、誰かが犠牲になるしかねぇじゃんか!」
ギャアギャアと男爵と石ザルがもめていると、パーポーの低い声が響いた。
「何をゴチャゴチャ言っている…… 安心しろ。貴様等誰一人として、許す気はない……」
かつて戦場を駆ける獅子と呼ばれた男は、見事なまでの剣さばきで、相手を一人、また一人と倒していった。
「聞耳グラスを割ったのは、おまえかっ!」
「ち、違う…俺はその時…」
「聞耳グラスを割ったのはおまえかっ!」
「違う…俺が割ったのは…」
「聞耳グラスを割ったのはおまえかっ!」
「ち、違う…俺はやって…」
「ホワイト…」
「んっ? なんだ?」
次々と敵を倒し、その度に聞耳グラスの事を問い正しているパーポーを、遠巻きにして眺めながら、ピンクはホワイトに声をかけた。
「パーポーはなんでコンパッチソードしか使わないんですかね? 確か、ギャラクシーアイとか言う技がなかったでしたっけ? ブラックをとりこにしかけた」
「ああ、あれか」
言われてホワイトは頷いた。
「あれは今回は無理だろ。ギャラクシーアイはブラック専用だからな」
「ブラック限定って事? それじゃ必殺技にならないじゃないですか」
ブラック限定と聞いて、ピンクは思わず呆れた声を出してしまった。
「いや、ブラックを落としかけたんだからな、パーポーにとっては必殺技なんだろう。俺のこの声がおまえの腰に来るようにな」
「何言ってんですか、もう」
耳元で囁かれて、ピンクの頬が赤らむ。
「あんたってば…」
「ちょっと! 2人だけの世界を作ってる場合じゃないだろ!」
2人の会話に、1人ぽつねんと置いていかれていた、ブラックが叫んだ。
ホワイトはピンクの腰に手を回したまま、ピンクはホワイトの首にしがみついたままの姿勢で、ブラックに視線を向けた。
「なんだ?」
「なんだよ?」
「もうパーポーだけで、全部倒しちゃうって!」
言われて見てみると、今まさにパーポーは、最後に残った男爵を倒そうというところだった。
「ネギーアタック!」
「ぐわっっ!」
Nのマークをでかい体いっぱいに付けられた男爵は、その場にバッタリと倒れた。
「奥のブースの聞耳グラスを割ったのはおまえかっ!」
パーポーは男爵をガクガクとゆすぶった。しかし男爵は、うめき声を上げるだけで答えない。
「答えろ! おまえが最後なのだから、おまえ以外有りえん!」
「……」
「なんだ!」
男爵が何かを呟いた。パーポーが聞き取ろうと、耳をそば立てる。
「ピッ、ピンクの腰に触りたい…」
「何ふざけた事ぬかしてやがる!」
男爵の呟いた言葉が聞こえたとたん、今まで遠巻きにしていたホワイトが、驚くべき早さで、男爵に蹴りを入れた。
「ぐはぁ!」
男爵が吹っ飛ばされて、大きな体がトドの様に転がる(注:作者は男爵が嫌いではありません)
「待て! ホワイト!」
まだ聞きたい事を聞き出していないパーポーが制止をかけたが、ピンクの事になると、我を忘れる傾向のあるホワイトは、その制止を聞かずに、大きく足を振り上げた。
「お空の星になっちまえ!」
ドゴス、という鈍い音が響いた。ヒュルルルルル~という音と共に、男爵のトドの様な体が、開いていた窓から空に向かって飛んでいく。

「俺のピンクに手を出そうなんざ、100万年早えんだよ!」
フンと鼻息も荒く、お決まりのセリフを吐いたホワイトは、決まったぜとばかりに振り返った。その頭に、サクッとネギ…… ではなくコンパッチソードが刺さる。
「なにしやがる!」
 頭にサックリと刺さったままのホワイトが、パーポーに向かって怒鳴る。
「まだ聞きたいことが残っていたのに、蹴り飛ばすとは……っ! 貴様、それでも親友かっ!」
ホワイトはハッとしたように動きを止めた。
「すまない、親友…… だが俺は、俺は、何よりもピンクが大事なんだ! ピンクの事になると、つい我を忘れちまう。すまない……」
「ホワイト……v」
ホワイトの言葉に、ピンクの頬が赤らむ。その瞳が感激で、潤む。
「分かる、分かるぞ、親友! 俺も同じだ! だからこそ許せないんだ。聞き耳グラスを割った奴等を!」
「親友!」
力説し、ホワイトとガシッと抱き合うパーポーを、ブラックは少々引き気味で見ていたが、入り口に現れた影に、ハッと身構えた。
「誰だ!」
ブラックの声に、他の3人も入り口に注目する。その姿は逆光を背に受けているせいで顔がよく見えなかったが、そのシルエットから、4人はそれが誰なのかがすぐに分かった。
「プリンセス・スノーホワイト……」
ピンクはその名を呟くと、深々と腰を折った。パーポーは最敬礼を。ブラックは緊張して直立したままだ。
「よう、スノー姫」
ホワイトがその名を馴れ馴れしく呼んだとたん、その頬ににピンクの張り手が飛んだ。
「あんた! 仮にもグラスノー国の最高統治者に対して、なんて口の利き方をしてるんですか!」
「いいのよ、ピンク。あなたやホワイトとは、古くからの知り合いですもの。それに最高統治者といっても、この国の工房の最高責任者ってことだけで、偉くも何ともないのよ」
そう言ってスノー姫はにっこりと笑った。
「さて皆さん、この度はこの工房を救ってくれてありがとう。既に作られていた聞き耳グラスは割られてしまったけれども、幸いにしてマイスター達も、この工房の設備も無傷でした。お陰でこれからまた腐女子達の為に、聞き耳グラスを作っていけるわ。手始めに、割れてしまったガラスを集めて、再生ガラスの聞き耳グラスを、がんがん作っていくわよ!」
頼もし気なスノー姫の言葉に、4人はホッとして顔を見合わせた。
「俺達はこれで帰るけど、何かあったらすぐに呼んでくれ。速攻で駆け付けるからよ」
ホワイトがリーダーらしくスノー姫にそう言い、右手を差し出した。その手を握り返し、スノー姫は嬉し気に微笑んだ。
「ありがとう頼りにしているわ。ピンクもホワイトを助けてあげてね。ブルーも、ブラックも」
実はピンクの大ファンであるスノー姫は、ホワイトの手を離すと、今度はピンクの手をギュッと握った。そのまま後方に控えている、いつの間にか庶民派に戻ったブルーとブラックを見る。
「もちろんです。俺達もすぐに飛んでいきますから、安心して工房を再開させて下さい」
ピンクは安心させる様にそう言い、握られている手を離そうとした。しかし存外に強く握られたまま、スノー姫は離そうとしない。
「… スノー姫、あの、手を……」
「あら、ごめんなさい」
ピンクが困って遠慮がちに言うと、スノー姫はウフフと笑ってその手を離した。
「では気を付けて帰ってね。グウェンダル長官には、後程正式にお礼を述べさせていただきますと伝えて下さいね」
「はい確かに、そう伝えておきます。それでは俺達はこれで。行こう、ホワイト」
ピンクがホワイトに声をかけ、4人はきびすを返して工房内から去ろうとした。
「あ、そうそう…! ブルー、ちょっといいかしら?」
ふと思い付いた様に、スノー姫がブルーを呼び止める。
「はい、なんでしょうか?」
既に歩き始めていたブルーは、皆に断りを入れると、スノー姫の前まで戻ってきた。
「どうかされましたか?」
「例の事なんだけど……」
こっそりと耳打ちしたスノー姫の言葉で、ブルーの顔に緊張が走る。
「ごめんね。まだなの。だから今回の件で心配をする事ないわ。あそこは実験、もしくは検品室だから」
「本当ですか? …良かった、本当に良かった」
ブルーはスノー姫の手を握ると、ブンブンと勢い良く振った。
「ありがとうございます! もう駄目なのかと、奈落の底に落とされたような気持ちでしたが、それも晴れました。本当にありがとうございます、スノー姫」
晴れやかな顔でみんなの元に戻ったブルーは、嬉しさを隠しきれない笑顔で、ブラックの手を取った。
「さあ、行きましょう、ブラック」
「う、うん……」
ブルーとスノー姫の親し気な様子に、なぜか心落ち着かぬ気分になったブラックは、ブルーに握られた手を振り解きたい衝動にかられた。しかし、しっかりと握る手はそれを許してはくれず、振りほどく事ができないまま、仕方なしにブラックはブルーの後をついていったのだった。

 

 

 

        ********************

 

 

 

「ここだよな」
「ええ、確かにここです」

 ホワイトはピンクに確かめると、萌えメーターに内蔵されている通信機のスイッチを入れた。
「こちらはくレンジャーホワイト。任務は無事に完了した。ただちに撤収作業を望む」
意味もなく格好を付けて報告するホワイトの姿を、ピンクはうっとりと見つめた。素っ気なく、ひどい仕打ちをしていても、ピンクはホワイトにべた惚れなのだ。ホワイトはあまり気が付いていないが、ピンクの視線はいつもホワイトの事を追っていた。
ブラックはそんなピンクの姿を、どこかうらやましい気分で眺めた。あんな風に誰はばかる事なく、自分の気持ちを行動に表せるピンクに、羨望を覚える。
「どうかしましたかブラック?」
急に元気がなくなったブラックに気が付いて、ブルーがその顔を覗き込む。
「なんでもない。それよりも早くどこでもド○出てこないかな。あれを二回もくぐれるなんて、ホントに、夢みたいだよな」
「そうなんですか……?」
地球産まれではないブルーにとって、それのどこがどうすごいのかが、いまいち分からない。その理由を聞こうと、口を開きかけたところで、ホワイトの怒声が響いた。
「なんだって! おい、そりゃねぇだろう! だったらパンマン号…えっ? 整備工場に行ってる? なんで、んな時に…おい、ちょっと待て! 待てって…! っちくしょう、無理矢理切りやがった!」
「…どうかしたのか?」
苛ついた顔で悪態を吐くホワイトに、嫌な予感を抱きながら、ブルーは尋ねた。
「どうもこうもねぇよ。ド○えもんの奴、の○太が呼んでるからって帰っちまったらしい」
「え? じゃあ、どこでも○アは? どうやって帰るんだよ?」
のび○が呼んでるんじゃ、仕方がないなぁなどと思いつつ、ブラックは尋ねた。
「……歩いて帰ってこいって」
ブラックの問いかけに、青い顔をしたピンクが答える。
「何だって!? パンマン号はどうしたんだ? あれなら本人識別レーダーで、乗り手である俺達の所まで、自動操縦して来れるだろう?」
「それがよ、ど○でもドアがあるからって、整備工場に出しちまったんだと」
ブルーが焦ったように一抹の望みをかけて言うが、ホワイトの口から出た答えは、その望みさえも打ち砕かれるものだった。
「じゃぁ……」
愕然としたブラックが呟く。
「歩くしかねぇな」
「ですね」
肩をすくめるホワイトと、溜め息をつきながら言うピンクを呆然と見つめ、ブラックは首をうなだれた。
ここはグラスノー国。エロフ基地まで1万里(嘘)湖越えの難所有りの道程だ。
「おら、ウダウダしていても仕方がねぇだろ。行くぞ!」
「仕方がないですねぇ」
早々に割り切ってしまったホワイトとピンクは、スタスタと歩きはじめてしまう。
「でもホワイト。俺が途中で動けなくなったら、置いて行っていいですからね」
ホワイトのマフラーを少し引いて注意を引き、ピンクはホワイトの瞳を見つめた。
「バカ、なに言ってやがんだ。そんな事になったら、おまえの事を担いででも帰るに決まってんだろ」
「本当に?」
「ああ、お前は俺の大事な半身だ。その半身を置いて行くようなバカな真似、誰がするんだよ。……なあ、ピンク。おまえは俺が信用できねぇのか?」
ホワイトはそんなピンクの肩を引き寄せると、その顎に手をかけた。
「そんな事…… ちょっとあんたの気持ちを確かめてみたかっただけです」
「ピンク、俺にはおまえ以上に大事なものなんてないんだぜ」
「ホワイト……v」
チュッと頬にキスをされて、ピンクの顔が赤らむ。その間にも二人の歩みはとまらない。
化け物じみた体力を持っていると言う噂が、まことしとやかに流れているバカップルの後ろを、実はそれが噂でもなんでもなく、真実だと知っているブラックは、黙々と歩きながら溜め息をついた。隣で妙に浮かれているブルーをチラリと見上げる。
「何ですか、ブラック?」
ブルーがその視線に気がついて、穏やかに微笑する。その瞳が確かに浮かれているのを確認したブラックは、何かを言いたげに口を開いたが、結局何も言わずに口を閉じた。
「どうしたんですか、ブラック? あっ、分かりました。エロフ基地まで歩くのが辛いんですね? 大丈夫ですよ。俺がしっかりと基地までお連れしますから」
何かを誤解したらしいブルーが、浮かれた笑顔のままブラックに言った。
別にそんな事じゃないんだけどと思いつつ、自分でも何が言いたかったのかが、分からなくなっているブラックは、モヤモヤとしたした気持ちが胸の奥に生じるのを感じた。
「……で、姫抱きでいいですか?」
「…うん……って、姫抱き!」
自分の思考に捕われていたブラックは、何の気なしに返事をした。しかしその言葉の意味に気が付いて、慌てて叫んだ。
「なに言ってんだよブルー! おれは男なんだから、姫抱きなんてされてどうすんだよ! つーか、マジで遠慮させていただきます!」
「そうですか…… じゃあ」
ぷるぷると首を振るブラックを残念そうに眺めて、肩を落としたブルーは、何を思ったかブラックに背を向けてしゃがみ込んだ。
え? なに?」
ブルーの行動が今ひとつ理解できないブラックは、戸惑った様にその背を見つめた。
「おぶってあげますから、背に乗って下さい」
「えー、でも……」
「早くしないと、ホワイトとピンクに置いて行かれてしまいますよ」
それでも躊躇しているブラックに、ブルーが前方を指して催促する。ブラックがその指された方向を見ると、確かに前方の2人はかなり小さくなっていた。
「さあ、ブラック」
「……うーん、じゃあ」
確かにこのままでは二人に追い付くのは無理になってしまうと思ったブラックは、どこか気乗りしないまでも、ブルーの背中に乗っかった。
「じゃあしっかり掴まっていて下さい。飛ばしますよ」
ブルーはしっかりとブラックを背負うと、まるでニンジンを吊るされた馬の様に、エロフ基地に向かって走っていったのだった。

 

 

 

 こうしてはくレンジャーのお陰で健全思考の陰謀は砕かれた。

 ありがとうはくレンジャー!

 戦えはくレンジャー!

 明日の萌えはどっちだ!

 

 

 次回はくレンジャー『代価の代償』をお楽しみに!(嘘)

 






                            終






まれ助さまvこんな素敵なお話(しかも長編!!)をありがとうございましたvv
ホワイトとピンクのいちゃいちゃぶりに、読みながら顔がニヤケました♪エヘヘ
ヤキモチ妬く可愛いブラックと、ヒーローのようなブルー(だからヒーローだって(T_T))に俺らのハートはノックダウンさvv
次回はくレンジャー『代価の代償』待ってます☆(ワリと本気♪)