ガーデニング

                             ゆのまゆさま





最近、若島津はガーデニングにはまっているらしい。

日向たちの住んでいるのは(すみません一緒に暮らしているんです)、極々普通のマンション。小さなベランダがあるだけで、庭付きの一軒家でもなんでもないのだが、若島津は鉢やらプランターを買ってきてはいろんな草花の苗を植えつけている。

いつも綺麗な草花を見れるのはいいのだが、日向にしてみれば、花は若島津1人で十分なのだ。何が哀しくて、草ごときにコイビトとの貴重な時間を邪魔されんにゃならんのじゃ。

お互い別々のプロチームに所属している二人は、一緒に暮らしていても共有できる時間は意外と短い。

せっかく一緒にベッドに入っても草花が気になるらしく、ここ1ヶ月ほどはえっちをさせてくれない。

いい加減、欲求不満になりそうなのだが、日向は気になることがあって、もう一歩踏み込む勇気がないのだった。

  

 

 

「もうすぐ誕生日だよな。何が欲しい?」

「うーん、花の種がほしいなあ。」
1週間ほど前の会話だ。

「あのさあ、誕生日プレゼントだし、他に何かないわけ?」今までだって高価なプレゼントを要求されたことはなかったが、これはないだろう。

日向は肩をがっくり落としてため息とともにつぶやいた。

花の種なんて、よっぽど珍しいものでもない限りたかが知れてる。まさか「勇気の花」(あんぱんまん)や「まごころ草」(めろんぱんなちゃん)の種がほしいとかっていうんじゃなさそうだし。

「今、一番興味あるのって花だし、一度種から育ててみたいなって思ってたんだ。」

「ふ〜ん。」

苗から育てるのも、種から育てるのも変わらないんじゃないか?それに種から育てるのってなんかめんどくさそー。

「生き物育てるっていいよなあ。水やって肥料やって、それに応えて綺麗な花咲かせてくれたら、すっげー嬉しい。苗だと途中から育てることになるけど、種から育てるのって、自分の子供みたくてもっとかわいいんじゃないかな。」子供そだてるのもこんな感じなのかもしれないな。

若島津の何気ない一言に日向はどきりとした。

も、もしかして、こどもが欲しいのか?俺が産めるんなら、いくらでも産んでやりたいが(注:この話は健受です)こればっかりは・・・うう(涙)。もちろんその逆も無理だしなあ。

それとも他に好きな奴ができて遠まわしに別れたいって言ってるのかも。

 

 

 

 

それ以来、日向は若島津に対してちょっと自信を無くしてしまっている。

若島津の笑顔を疑ってるわけじゃないけど、恋するココロは敏感なのだ。

 

 

 

 

「近頃、日向ちょっと変だね。」明日はお互い久々のオフだ。普段は翌日のことを考えてそれなりの時間に就寝するのだが、今日は未だに二人でグラスをかたむけている。もうすぐ日付が変わろうとしているけど、こんな夜はゆっくりと楽しみたい。酒の力を借りて、思っていることを素直に聞けるかもしれない。若島津もそう思ったのか、少し心配そうな表情で、でも何故か楽しんでいるような瞳で、顔を近づけてささやくように聞いてきた。日向は久々に聞く若島津のささやくような掠れた声に心臓が跳ね上がるのを感じた。ああ、ああ、好きですよ、まったく。例えあいつが他の奴を好きになったって、あきらめられるわけねえよ。なんで今まで、何を考えているかあいつに確認しないままブルーになってたんだろ?こんなにあいつが好きなのに・・・自問自答している日向を見て、若島津の口がほころんだような気がした。

 

 

「あのさ、ずっと聞きたかったんだけど、俺と花。どっちが大事?」

日向はもう死ぬ覚悟で聞いた。

ここで「花に決まってんじゃん」とでも答えられたら本当に死んでしまうかもしれないけれど。

そんな真剣な表情の日向に若島津は我慢しきれないように噴出した。

「はあ?ばかじゃねえの?そんなくだんないこと悶々と考えてたわけ?」若島津の口が悪いのはいつものことだ。かわいい顔して言うことがキツイ。いつもなら、聞き流す俺もちょっとばかりカチンときた。

「だって、花が子供みたいでかわいいとか言ってるし。最近やらせてくれねえし。」

「花なんかに嫉妬するかよ。ふつう。」

ふわりと抱きつき、何かを言おうとした日向の唇をそっとふさぐ。

花はきれいで安らげるけど、日向の目はもっと綺麗だし、そしてあたたかい。

それにこんなに強く抱き返してくれる。

「俺の一番大事なのはお前だけだよ。」

そう言いながら口付けてくる恋人の身体は花の香りがした。

 

 

 

 

「とうとう日付が変わった。」

今日、俺の誕生日なんだけど、覚えてた?

若島津はいたずらっぽく笑って言った。

「げっ・・・」

毎日、若島津のことを考えすぎて、肝心の誕生日のことを忘れていた。

ちょっぴり青ざめている日向に気づかない様子で若島津は話を続ける。

「別に、日向とのえっちが嫌いで最近しなかったわけじゃないんだ。ただ、俺が嫌がったら一体どれくらいガマンしてくれんのかな、なんてさ。」

時々えっちだけが目的なのか心配になると言い、少し心細そうに目を伏せた。

「でも、もうダメ。俺のほうが、日向を欲しくて狂っちまいそうだよ。」誕生日プレゼントはやっぱり日向がいい。首に手を回しながら上目遣いに見上げてくる瞳に勝てるはずもなく。溢れそうな愛情を腕に掻き抱いた。

 

 

 

「で、俺がどれだけお前のことが好きかわかっただろ?」

しばらくぶりの甘い身体を手にし、満ち足りたカオで日向はそう尋ねた。

「う〜、どうだろ?やっぱり身体だけ?とか思ってしまったけど。」

「そんなこと、あるはずないだろ?!」

慌てて起き上がり、睨むように見つめてくる男に微笑がこぼれてしまう。

「うそうそ。わかったよ、十分に。俺のために1ヶ月もえっちガマンしてくれたしな。」

それと、今のえっちでもわかっちゃったんですけど。先ほどまでの自分たちを思い出して顔が赤くなる。

あんなに日向の腕は優しかったっけ?

日向の広い胸、器用な長い指、そして太陽のアツサを持つ唇。

全部、ほしい。

誰にも渡したくない。自分だけのモノ。

 

 

 

「俺もなんか育てるかな・・・」

「ダメ!」

日向の呟きに即座に若島津は却下した。

「日向は、俺の世話だけをしてればいい。」

「・・・わがまま・・・」

あまりの言葉に絶句してしまう。でも。

そんな我儘までもが愛しい。

自分にだけ、こどものようにわがままを言うことを知っている。

『えっちだけが目的なのかと心配になる』と言った若島津の表情が忘れられない。
もう二度と、そんな表情は絶対させない。

これからは、若島津というわがままな花を育てよう。
愛情という名の肥料は、たっぷりと。
毎日、キレイな笑顔の花を咲かせるように。






「健ちゃんの手のひらでクルクル回ってる小次が理想」と書いたら、ほんとにクルクルまわってる小次を書いてくださいました!いいぞっ健ちゃん、もっとふりまわして〜小次郎、もっと回れ〜〜ッッ
花は若島津ひとりで十分だvなんて…もう小次郎可愛すぎ!何度読んでも悶えますぅぅ!

ゆのまゆサマ、ほんとにありがとうございました〜♪(by姫川)