呪文





ユーリ、あなたが好きです。…誰よりも、何よりも…

「そんなこと…おれも…おれだって…」

大きな瞳が揺らぎ、長い睫毛を具えた瞼が閉じられた。

…オレダッテ…

応えたその柔らかな唇をそっと指先で触れた。

愛しいユーリ、あなたのこの唇から《スキ》という言葉を引き出したい。

俺の、俺だけのユーリになって、俺だけを見つめて。

そしてこの唇から《スキ》という呪文を唱えてあなたの心に俺を縛り付けて欲しい。

ユーリ、好きです。俺の全てを懸けてあなたが…

伏せた瞼がひらき、高貴な色を湛えた瞳が俺を映す。

《スキ》たったふたつの文字なのに、あなたの唇からその言葉を聞くのは困難だろうか。

その唇が小さく震えてそしてきゅっと瞑られた。


ユーリ、いじっぱりな可愛い俺の、俺だけの陛下…




「あなたが好きです。誰よりも、何よりも」

いつもの変わらぬ口調で、おれに告げた。

 

穏やかなブラウンの瞳が優しくおれの心を覗き込む。

そんなこと、おれも、おれだって…わかってるだろう…?

急に気恥ずかしくなって慌てて目を伏せた。

コンラッドの大きな暖かい手がほほに触れ、指が唇をそっとなでた

まるでその先の言葉を待っているかのように…。

 

《スキ》その言葉で心が満ちたりる。まるで呪文のよう。

おれも《スキ》コンラッド。あんたが、誰よりも、何よりも…

唇から《スキ》が飛び出しそうになって慌てて飲み込む。

 

おれも《スキ》だよ、コンラッド…心の中で呟いてみる。

あんたの過去は知らないけれど、あんたの心をおれだけにしたい。

呪文をかけておれをあんたの心に刻みたい。

 

瞳を上げると優しい笑顔が俺を包む。

《スキ》もう一度心でつぶやく。

大スキな人の温もりを感じながら。






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