はくレンジャー、魔王奥へ行く!
対峙する敵との間を、一陣の風が駆け抜けていく。
凍りついた空間の中、戦士達の髪が生き物のように風になびく。
次の瞬間、突然風向きが変わり、自分達に向かって正面から吹き付けてきた風から、敵たちが目を庇うように顔面に手を翳した。
それを合図に、ユーリが、若島津が、コンラートが、日向が、そして謎の金髪美少年が、掛け声を上げて次々に服を脱いで戦士へと変身にしていく。
「「「「「プリピュア、メタモルフォーーーゼ!!」」」」」
しかし、変身後のそれは普段と違ってはくレンジャー定番のセクスィー下着ではなく、プリティでキュアキュアした美少女戦士のものにしか見えない(そして2名ほど似合っていない)。
衣装のカラーリングも、ブルー以外は皆変わってしまっている。
だいたいいつもなら、変身の時に決め台詞を言ったりしない。
……そう、ここは戦場ではなく舞台の上。
しかも地球上の舞台ですらない。
ここは眞魔国の王城(血盟城)の奥、【魔王奥】と呼ばれるところ。
そのステージで、なぜかはくレンジャーたちは世界中を自慢のマッスルで征服しようと企む、筋肉ムキムキの悪役(ヨザックに非ず)と戦う正義の味方という役どころで、劇を熱演している真っ最中なのだ!
舞台の上では今まさにクライマックスシーンを迎えようとしていた。
それぞれポージングしながら、決め台詞を放っていく。
「大いなる野望の力・ピュアアメリカンドリーム!」
「情熱の赤い消える魔球・ピュアルージュ!」
「弾ける貴族の香り・ピュアレモネード!」
「安らぎの緑のフィールド・ピュアミント!」
「欲望の深き泉・ピュアアクア!」
「「「「「貧困の力と本能の光、バサバサ羽ばたく5つの心!ノンノン!プリピュア5!!!!!」」」」」
たぶん誰が何色か書かなくてもすぐバレると思いますが、一応下のような設定になっています。
■アメリカンドリーム(ピンク)=ホワイト(日向小次郎)
■ルージュ(赤)=ブラック(渋谷有利)
■レモネード(黄)=なし(フォンビーレフェルト卿ヴォルフラム)
■ミント(緑)=ピンク(若島津健)
■アクア(青)=ブルー(ウェラー卿コンラート)
ちなみに元ネタとなったのはもちろん人気アニメの【プリキュ○5】。
なぜ戦隊名を【プ○キュア5】から【プリピュア5】へと微妙に変更したのかというと、「全員男でプリキ○アみたいにプリチーでキュアキュアしていないから」というブラックのとても真っ当な意見が通ったからなのだそうだ。
微妙というなら【ピュア】も若干微妙だが、こちらにツッコミを入れた猛者はいなかったらしい。
彼らがなぜこんなところでこんな劇を演じているのか。それは少し時間を遡る。
「そんなわけで、今回またもや魔王奥で出し物をすることになりましたので、何卒はくレンジャーの皆さまのご指導・ご鞭撻・ご協力をお願いいたします!!」
ブラックこと渋谷有利が、殊勝に、だが突然わけのわからない頼みごとを口にしたのは、その日プールで行われた強化訓練が終了した直後だった。
時々感情のままに突っ走っては言葉の足りなくなってしまうブラックを補うべく、ブルーが苦笑しながらフォローを挟む。
「眞魔国のユーリの居城である血盟城の奥には、魔王陛下専用の娯楽施設、【魔王奥】があります。
少し前、魔王であるユーリ自身が直接参加して…」
「!!ちょっと待ったー!」
「……なんだ、ホワイト?」
説明をぶった切られたブルーが目を眇めて見やった先で、愕然としたホワイトとピンクが仲良く手を取り合って立ち竦んでいた。
「今、【魔王奥】って【魔王陛下専用娯楽施設】と言ったよな?」
「ああ、確かに言ったが?」
「それで、その【魔王】って、確か渋谷だっつってたよな?」
「その通りだ、第27代魔王・渋谷有利陛下。
まだ即位されて間もないというのに、既に歴代魔王陛下の中でも一番の名君との呼び声も高く、かつ国一番の美貌を兼ね備え、民にも深く敬愛さ−−−−−」
「なにィ!?明訓は魔王じゃなくて神奈川代表だろ!!」
「ホワイトは黙って沖縄※にでも行っといて。(※沖縄=トラウマ)」
ツッコミどころを誤るホワイトを一撃で沈めておいて、ピンクが冷静に問いただす。
「そんなことよりその【魔王奥】っていうのは、時代劇によく出てきて一応タイムリーな【大奥】と同じようなモノなのか?
あの、『見るは天国、入るは地獄』とかいう……だけどブラックはまだ16歳なんだぞ!
そっちの世界じゃOKなのかもしれないけど、こっちでは18歳にならないと法律にひっかかるんじゃないのか?
いや、ブラックがどうこうされる訳じゃなくて、ブラックのハーレムなんだからこの場合はいいのか…?」
「あ〜それね、うんうん。
おれもちょっぴり桃色な期待してたんだけどな〜」
どこか遠いところを見ながらブラックがしょっぱく答える。
すかさずブルーの気が鋭く尖ったのには当然気付かない。
「それが、【魔王奥】の【ま】は、【マッスル】の【ま】だったんだよねー。」
「「……マッスル大奥……?」」
何とも言えない沈黙が落ちた。
その空気を無視して、ブラックが兄貴分のピンクに訴える。
「綺麗なお姉さんたちに会えるんだと思って、おれもうワックワクで扉を開けたら、たくさんの筋肉ムキムキのお兄さん達がおれに(芸を見せようと)……っ!」
「わかったブラック、もういいから。可哀想に……お前も辛い思いをしたんだな…。」
「ピンク…!」
「まーそうだろうな。普通にハーレムな意味での大奥なら、お前がそんなに平然としていられるはずがねえもんな。
そうだろ、ブルー」
「ホワイト…!」
2組の親友達が、互いに固く抱き合った。
抱擁が解けてもなお、渋る2人にしつこくブラックの勧誘は続いていた。
「まあそんなこんなでいろいろあって、また出し物しなきゃいけなくなったんだけどさー、前回おれが出場した時、どういうわけかあんまり評判よくなかったんだよね〜。
それで、今回はブルーも一緒に出てくれるっていうし、ならもういっそのことホワイトとピンクにもお願いして4人で戦隊チーム組みたいなって。
あっ、4人じゃアレだからヴォルフにも頼んでちゃんと5人編成で臨むつもりだから安心して!
元祖(=5人揃ってゴレンジ○ー)にキッチリ敬意を表しなきゃだもんな!
というわけなんだ、お願い!どうか一緒に出場してください!おれを助けると思って!!
出てくれたらお礼に眞魔国名所巡り3泊4日の旅にご家族でご招待するから!」
「えっ家族で!?」
「待て待て待て待て、ホワイトあんたいきなり釣られないで下さいよ!
とにかくブルーが一緒に出るまではわかるけど、何で地球人で人間のホワイトや俺が筋肉祭りに…」
「よく言うだろ、『戦うアフォーに見るアフォー、同じアフォなら戦わなきゃ☆』ってさ!」
「『踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損』ですね。」
「あ、そーだっけ?あと、祭りは参加することに意義があるんだぞ!
それにおれ達がいつもやってることと同じじゃん!慣れてるし!」
「つったってなあ、俺たちだって別に『○○レッド!』とか毎回やってるわけじゃねえ……ヒッ!」
瞬間、奥歯の加速装置をオンにしたかのような速さでホワイトの背後を取ったブルーがコンパッチソードを鞘走らせながら、親友の耳元で「貴様…ブラックの頼みを断れると思うてか?」と低く囁いたのにもまた気付かず、ブラックがわが意を得たりとばかりに大きく頷いた。
「そうそう、まさにそれだよホワイト!戦隊モノって子供が大好きで大喜びするだろ!?
ウチの子も、多分すごく喜んでくれると思うんだよねー!!
まーウチの場合は女の子だから特撮よりはアニメの方になるかなー」
「「う…ウチの子……?」」
「ブラック………ウチの子って……お…お前、まさか子持ちだったのか……?」
「おー、聞いてくれるのかピンク!そうだよ!おれ子持ちー!
(※養女なので、ユーリと血の繋がりはありません。)
もうホントにすっごくかわいいんだぞーーー!!
名前はグレタっていうんだ、いい名前だろ!おれが考えたんじゃないけど。
目なんかクリクリでこんな大っきいんだぞ!髪もちょっとクルクルっとしててすっげーかわいーの!時々結ってもらってたりしててな!
あっちへ帰ったらいつもすぐに駆けつけてきてくれてさーーーvvv
『ゆーりぃ、大好きーv』って抱きついてきてくれるんだぞー、
いつかお嫁にいくのかと思うと父さん今から泣けてしょうがないよー」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
デレデレと頬を染めながら照れつつも自慢しまくる親バカモード全開のブラック。
ブラックが子持ちだったという事実は、彼のことを初心でネンネ(死語)だと思っていた……いや、密かにずっと無垢なままの弟分でいてほしいと願っていたホワイトとピンクの心に大きな衝撃を与えた。
(チェリーくんだと思っていたのに、何というスキルアップ…!!)
子供がいるというからには、ブラックには当然そういうお相手の女性がいるわけで。
女性という以上、それはホワイトの背後に潜むヘタレンブルーでは絶対にありえないわけで。
(というか、それ以前に告白すらしてないヤツとどうにかなれるはずがないわな…。)
2人の頭の中を、以前「ブラックと手を繋ぎたい」と言っていたブルーのはにかんだ笑顔が走馬灯のように駆け巡っていった。
「「哀れな……。」」
ブラックに未だ絶賛片思い中なブルーの心中を慮り、思わず2人でハモってしまったホワイトとピンク。
特に彼とは親友っぽいの仲で、おまけに元々涙腺の緩いホワイトは、涙の壁で前がよく見えなくなってしまった。
当の本人は耳と心に蓋をしているのか、今の会話に全く気付いてないようなのがまた哀れさを一層際立たせる。
暗く重い視線に気付いたブルーが、怪訝そうに問いかけてきた。
「なんだ?なぜそんな気の毒な者を見る目で俺を見ている?」
「「い、いや、何でもない…」」
「だってお前気の毒だし」なんてとても言えない。気の毒すぎて。
「どうやら話は終わったようだな。では早速。」
「ちょっと待て!早速って一体、」
「つべこべ言わずにさっさと飛び込め」
宣告と同時に狙いすました回し蹴りがホワイトの側頭部に炸裂した。
バランスを失って倒れ込むホワイトの先に、さっきまで4人が訓練に使っていたプールが満々と水を湛えて待っている。
その時、転落したホワイトの上げる派手な水しぶきの先に、不思議な色の渦が発生するのをピンクは見た。
以前に数回見たことのある水の渦。
いずれもブラックが、彼の王国と行き来する時に現れていたものだ。
息を呑んで渦を見つめている内に、「ピ(ピンク)」「た(たすけて)」という言葉にならない声を残し、ホワイトが一気に飲み込まれ、そのまま水中に消えていく。
「さ、おれ達も行こう、ピンク!」
笑顔でブラックに誘われて、ピンクはため息をついた。
「仕方ないな。」
何しろ、断ろうにもホワイトはとっととあっちへ流されてしまっているんだし。
ブラックに目で頷くと、ピンクはホワイトの後を追って、ブラック・ブルーと共に水中へ飛び込んでいった。
END 20080520 UP |
「ROOTS」の佐伯ヒナ子さまが、なんとピュア・ミントのイメージイラストを描いてくださいました♪♪♪ もう〜ヒナ子島津の少年っぽさがイイ!! ヒナ子さまのサイトへリンクさせていただきました。皆様ご堪能ください〜〜vvv ![]() |
ここまで頑張って読んでくださって、本当にありがとうございます。
話の設定がまるマ世界だったので、特にコジケンファンの方にはわかりにくいところも多かったと思います。ゴメンナサイ!!
というか、これ原作の小説本編で収録された話かどうかも忘れたよ…。
今回は、小説とマンガの表現の違いをヒシヒシと感じました。
例えばセリフの入れ方1つ取っても、マンガならキャラを描いて吹出しにセリフ入れれば誰が言ったかわかるけど、
SSだと「」の中の言い回しか、前後の文章で汲み取ってもらわないといけない…のに、登場人物4人もいるがな…。
後、背景とか描けないのがちょっと残念でした。
特に「大いなる緑のフィールド」の健ちゃんの後ろに、何ヶ月走っても相手チームのゴールが見えないフィールドを翼・岬込みで描きたかった…。
本当に残念です。
ヴォルフを勧誘するユーリとコンラッドも入れたかった…影が薄くなってごめんねー、三男。
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