「つまり、こういうことよね?坊ちゃんはいつもスカしてる隊長の泡食った顔がみてみたい・・・と。」

「うーん、まあそうなるかなあ。」

そこは血盟城のとある一角。最近こっそりつるむことが多くなった某2人の悪企みが進行していた。

 

 

 

エイプリル・フール

 

 

ユーリは不満だった。

原因はコンラートだ。いつもいつも余裕顔のこの名付け親のポーカーフェイスを崩してやりたくて一生懸命知恵を絞ってみたが、どうシミュレーションしてみてもそんな事態は想像つかない。それがまた悔しくて、意地でも計画練ってやろうとしている時にタイミングよく現れたお庭番。

渡りに船とばかりに相談してみた。

(・・・そういえば・・・)

このお庭番は急に国内勤務が増えたらしく、以前より格段に血盟城内で見かけることが多くなっていた。前にシマロンの羊風呂で出くわした時、自分のことを眞魔国随一敏腕諜報員とかいってなかったか?あんなスクープすっぱ抜けるのは自分だけだとかなんとか・・・。

 

「なあ、ヨザック、今国内で面倒な事件でも起こってるのか?」

「は?い〜え〜?至って平和なもんですよ?」

「・・・・・・・。」

平和で穏やかな世界で満足しているヨザック。・・・・・・なんかありえない気がする。

「じゃあなんで国内にいるの?ってか最近会うこと多いよな?海外派遣の仕事に嫌気がさしたとか?」

「まっさかあ!あんなワクワクドキドキなお仕事、他にないわよぉvそれより陛下ったら、グリ江が最近お城にいるのが多いってちゃ〜んと気がついてくれてたのね〜、グリ江、嬉しい!!」

「ぎゃああああ!!」

思いっきり上腕二頭筋に抱きしめられてしまった。

「ヨヨヨヨザ!!・・・離」

「なんで国内の仕事が増えたかっていうとですね、俺が編み物閣下に頼んだからです。」

抱きしめたまま、ヨザックが低く耳元で囁いた。

 

「・・・・・グウェンに?なんで?」

「ここにいればもっと楽しいことがたくさんありますから。それに・・・ね」

「?」

意味ありげにお庭番が言葉を切った。見えないけど、彼が唇の端をつり上げて笑うのが見えるような気がした。

「近くにいれば、こうして時々陛下に触れられるでしょう?」

 

何だって?何の近くにいたらおれに触れられるって?っつーか

「ヨザックはおれに触れたいとか思ってるのか?」

「もちろんです。」

即答。わかんねー。おれなんかに触って何が嬉しいんだか。

 

「それより、坊ちゃんは何で隊長に泡を食らわせてやりたいんです?」

「あー・・・。そりゃ」

 

単に悔しいからです。とはいいたくなかった。何か起こっても、右往左往して騒ぐおれを尻目にいっつも涼しい顔をしているコンラッド。冷静沈着という言葉はおれの名付け親のためにあるんじゃないだろうかというくらい。もしかしたら、というより間違いなくおれより人の上に立つ人物にふさわしいと思う。

まあ、おれの周りはそういうできた人物ばかりだし、今更それが悔しいとは思わない。

思わないんだけど、コンラッドにだけは何かひっかかるモノを感じるのだ。

慌てふためくおれと、いつも平常心のコンラッド。

なんか面白くない・・・非常に。

 

「コンラッドってさ、いっつも微笑っているけどめったに自分の感情出さないだろ?だからたまにはおれがビックリさせて、うろたえてるコンラッドの顔を見てみたいと思ったんだよな。」

「ほ〜、おれが・・・ね。」

「?・・・うん。ちょうど今日はエイプリル・フールだし。地球でのイベントなんだけどな、この日だけは堂々と嘘をついて、誰かを騙してもかまわない日なんだよ。だいぶ前聞いた時、コンラッドもそのこと知っててさ、だからなんとか驚かせてやろうと思ったんだけど・・・。」

 

「何にも思いつかないんだよねー。」

思わずため息がこぼれた。

そして冒頭の会話に戻る、というわけだ。

 

 

ちょっとの間何事か考えていたお庭番が、悪代官という表現がピッタリな顔をしていった。

 

「それなら坊ちゃん、素晴らしいアイデアがありますよ。隊長をギャフン(死語)と言わせて坊ちゃんも満足、オレも満足、一石二鳥のおいしい計画が」

「ホントかヨザック!?」

 

なんかヨザックが「オレも満足」とかいうのに少し疑問を感じたが、そんなこと今はどうでもいい!さすがヨザック!!おれにはさっぱりぽんだったことをあっという間に思いつくとはさすが付き合い歴?0年!!腐れ縁万歳!!

 

「それは・・・ですね」

もともと抱きしめられて密着しているのにさらに耳元まで顔をよせてヨザックが囁く。

 

「・・・・・・ええ〜〜〜〜ッッ!?」

「これなら絶対ですって。まあ一度やってみてくださいよ、ちょうど向こうから陛下を

探して隊長がカッカしながら走ってきてますから。」

「でもそんなことでコンラッドが・・・」

「大丈夫、ものは試しです。」

 

ヨザックがいい終わるか終わらないかのうちに瞬時に距離を詰めてここまで来たコンラートがいった。

 

「ヨザック、これはどういうことだ?」

 

抱き合ったままのおれたちに、顔は笑ったままのコンラートがいった。

・・・・・すでにいつものコンラッドと違う気がする・・・・・。

 

「ほら、坊ちゃん、隊長が聞いてますよ、答えてあげて?」

 

ヨザック、それは計画を実行しろということか!?・・・そ、そうだよな、そういう計画だったもんな、なんかちょっと怖いけど・・・・。

 

「ユーリ?」

 

「あ、あのさ、コンラッド・・・・」

「なんでしょう。」

 

うッ何だ、この圧倒的な威圧感は!?

だがおれは負けねーぞ!!行けッッ行くんだユーリ!!

 

おれ、ヨザックとつきあうことにしたから!!

 

 

 

 

結果として、おれは名付け親の愕然とした表情というものを見ることができた。

だが、その代償として・・・・・・・・・これ以上は、恐ろしくて、いえない。







平行して書いてる「give way」がシリアスなので、こっちは同じような設定で軽い
風味で書いてみました。
ユーリ、そんなひどい目にあってなきゃいいですけど(他人事)
月影はヨザダイスキーなので、彼の出番がとっても多いですvv報われませんけど。

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